WISDOM96 14th WISDOM96 14th 〜ウニの卵割


 

私たちWISDOM96の第14回目の取り組みとして、無謀にも、時期をまったく考えずに「ウニの卵割の観察」に取り組みました。
 この実験に関わっては、NIFTYSERVE FKYOIKUS#5【理科の部屋】、FSCI#4【生物】の各会議室から、いろいろなアドバイスをいただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。
 


【実験用ウニの入手先】

入手DataBase生物編〜ウニの発生段階別材料
生きたウニについてはお近くの漁協までどうぞm(__)m



【ウニの受精観察手順】
  1. ウニを何とかして入手します。
  2. 塩化カリウム水溶液を注射して、精子・卵を採取します。
  3. それぞれを混合して、観察します。


【実験を成功させるためのポイント集】



【ウニを入手してから】

基本的には生きのいい成熟したウニを使うこと。実験までの日数が1日以上採集してか

らの場合は、海水でぬらした布と新聞紙に包んでク−ラ−ボックスで保管しましょう。



【ウニの雌雄を見分ける】

生徒の中には、ウニには雌雄の別がないと思っている場合があります。実際にはちゃん

と雌雄の差があるのですが、見分けるのはかなり大変です。

雄雌の区別はつきます。ヒントはウニの口器や口器周辺をみてください。

でも、口器をみなくても雌雄の区別ができますが、これは高度な技術です。

バフンウニの場合は、ウニの下の方の管状の棘みたいなところからニョロッと出ている

管足が黄色っぽいのが雌で白っぽいのが雄だということです。漁師さんだとほとんど間

違えないそうですがそれでもたまには間違えるということです。

もっと確実に雄か雌かを見分けるときには、ウニを水から上げて、口側に電気ショック

をちょっと与えて、ウニをそのまま机の上にでも置いておきます。で、反対側の生殖口

から黄色い卵か白い精子がにじみでてきますから、それで判断します。

わからなければ海水に入れてみればわかります。粒が見えるのが卵です。



【受精させるときのポイント】

出した卵は、海水中に沈んだら上澄みを棄ててまた海水を入れ、卵が沈んだらまた上澄

みを棄ててということを3回くらい繰り返して、夾雑物を取り除きます。

そうすれば、受精膜が上がるところなんかがきれいにかんさつできます。



精子を混ぜて媒精するときの濃度は、卵の入っている海水がちょっと白っぽくなる程度

です。濃すぎると多精を起こし、卵割が乱れ、発生がうまく進みません。 

 また、受精を確認したら、不必要な精子は洗い落とすのが普通です。これは、上記の

方法で何回が卵を洗って行います。精子が入ったままですとそれが腐り酸欠になって、

発生に異常を引き起こすことがあります。

シャーレなどの真ん中に卵を寄せて行い、海水はこまごめピペットで吸い取ると簡単に

できます。もちろん手回し遠心機などで沈殿させても良いですが、あまり重力をかけな

い方がいいと思います。シャーレの真ん中に寄せるには、シャーレ中の海水を、シャー

レを回しながら渦を生じさせるように動かすとできます。



【観察のタイミングを逃さないために】



 32細胞期くらいまでは、うまくいくとどんどん進みますからすぐに観察を始めまし

ょう。 

 観察をしない間は、卵はできるだけ顕微鏡のステージから降ろして涼しいところに置

いてください。温度によって発生速度が変わります。

それから、顕微鏡観察で、光源を使うときには注意してください。熱遮断のためのフィ

ルターがあっても、ものによっては卵が入った海水の温度が上昇することがあります。

温度が上がりすぎると発生が異常になりますので、たびたび下ろし、光源の電源を切っ

てステージを冷やすように指示してください。



【海水はどうするか】

大量の海水は準備しておいた方がいいでしょう。

なければ人工海水ということになりますが、実験用の値の張るものをお求めください。

今の時点ではどれがいいかわかりませんから、お店で袋を見て、ウニ発生実験用検定済

みとかなんとか書かれた、それなりに保証されたものを買わないとあとで泣きを見ます

。実は、ウニがきちんと発生してくれる人工海水を開発するために、その微量元素は何か

と、業者の方々は相当の研究を重ねてきています。企業秘密になっているとは思います

が。



【普段食しているウニは?】

精巣・・・・練りウニ

卵巣・・・・粒ウニ

で両方ともよく食べられています。

安い店ならウニと言えば練りウニが出てくることが多いと思いますよ。

寿司屋なんかは安い店だとよく練りウニがでてきますよね。



【いつ実験するのが良いか?】

日本全体で言えば、分布の広い種は産卵時期が長くなります。

種類別には、バフンウニが冬〜春。エゾバフンウニが夏〜秋(有珠では春と秋)。

アカウニが秋〜冬。ムラサキウニが夏。キタムラサキウニが秋。シラヒゲウニが

秋〜冬でしょう。


【観察の様子】

【ウニを入手します】
今回実験に遣ったウニの一部です。52k jpg
雄雌を判断するのは、この段階では非常に難しいものがあります。


【精子・卵をとります】

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口器周辺の柔らかいところから、塩化カリウム水溶液を1ml注射、又はピペットで流し込みます。


【卵や精子の放出】
説明付き14k jpg説明なし14k jpg
ウニがしっかりと成熟していれば、すぐに卵や精子を放出します。
この写真のように、放出されたものがオレンジ色だった場合は<卵>、白い場合は<精子>ということになります。
今回は、なんとたった一つが雄、しかもそれが一番最後の一個だったために、参加者一同、「ドキドキ」ものでした。


【混合する】
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採取して、海水で数回洗った卵をシャーレに入れ、精子の混濁液(海水50mlに濃い精子の液を一滴たらしたもの)を手早く・静かに混ぜます。
このとき重要なのは精子の量のようで、「多すぎず・少なすぎず」という感じのようです。


【受精がはじめるので観察】
この後、すぐに受精が始まります。顕微鏡で観察します。
ホールスライドグラスにとって、カバーグラスをかけ、100倍〜400倍程度の倍率でOKです。
 今回は、デジタルカメラで撮影をしましたが、様々な影響でうまく撮影されていません。同時にビデオで撮影したものを、ビデオプリンターで印刷をしスキャナーで読みとり、公開する予定です。


【受精の瞬間】〜未受精卵と受精卵:今回は1〜2分後
受精が行われたら、卵のまわりに受精膜ができてきます. この写真では、残念ながら精子をはっきりと見ることができません。
解説付き16k jpg 解説なし

【2細胞期】〜今回は2時間後程度から 今回は、「失敗なのか?」という話をしながら、夜中2時頃に眠い目をこすりながら観察をしていると、ついに2細胞期の受精卵を発見しました。
目が覚めます。

【4細胞期】〜今回は2.5時間後〜3時間後程度 2細胞期のステージを見たメンバーは、一気に目がさめましたが、「また2時間待ちか?」という雰囲気でした。
ところが、ちょっと油断をした隙に、どんどん分裂が進んで「4細胞期」になってしまいました。

【8細胞期】〜今回は4〜5時間程度 結局、睡魔との戦いで「当番制」にしました。監視チームが担当しました。
解説なし解説付き

【16細胞期】〜今回は7〜8時間程度程度 もうすでに朝です。
この辺になると、細胞分裂に失敗したものがずいぶん目立ちます。
解説なし解説付き


【実験の詳細】


(1)実験器具
 必要なものは、注射器、支持用針金、0.5molKCl溶液、及びビーカー(300〜500ml)である。  この他に海水を蓄えておくための大型容器(18Lポリタンク)が必要である。  なお、支持用針金は卵や精子への金属イオンの影響を防ぐため、ビニール被覆のも のを用いる。  観察用の器具として、スライドグラス、カバーグラス、ピペットなどを用意する。 観察用のスライドグラスはホールスライドがよいが、スライドグラスにビニールテ ープをはり、その一部を四角く切り取りホールスライドの代わりとして用いてもよ い。ピペットは卵を集めるためになるべく先の細いものを用意した方が便利である。

(2)採卵、採精  採卵・採精に際しては海水を満たしたビーカーの口に支持用針金をセットし、その中 央部にウニを口側を上にして置き、このウニの口の周りから注射器で0.5molKCl溶液 を約1ml注入して刺激を与え、放卵あるいは放精を誘発する。  なお、ビーカー中の海水はウニの肛門部分が浸かるくらいに入れておく。ウニは雌雄 異体であるが、外形から雌雄を区別できないので、KCl注入後生殖巣から排出される 内容物の落下の様子によって、卵か精子かを判定する。

(3)採精
 精子はそのままにしておくと受精能力を失い使用できなくなる。そこで精子を長時間 保存しておくには、精巣を保存しておく。ウニが精子を出し始めたらビーカーから取り 出し、シャーレなどの蓋のある容器にいれて冷蔵庫内に保存する。こうしておけば数時 間は使用可能である。  こうして得た精子を別の300mlビーカーに0.5ml取り、300mlの海水を加えて精子懸濁 液とし、媒精用として用いる。

(4)排卵
 卵もまたそのままにしておくとやがて受精能力を失う。卵の場合、放卵後2時間ぐら いが使用の限度で、これを過ぎると正常に発生をしない卵の割合がかなり増えてくる。 なお、発生段階をほぼ一致させる必要がある時には、採卵、採精は別のビーカーで行う。

(5)受精
 卵の入ったビーカーを一度ゆっくり攪拌したのち卵が沈降するのを待ち、海水を捨て 新しい海水を加える。  これは、卵以外の沈降物を除去して、腐敗を防ぐためである。このビーカーに、さき に示した要領で希釈した精子懸濁液を加えて攪拌する。精子が多すぎると、正常な発生 ができなくなるので、精子懸濁液をつくる際の精子の量には十分気をつける。  卵と精子を混ぜてから、通常数分以内に受精膜が形成される。したがって、上記の方 法では受精や受精膜形成を観察することは困難なことが多い。そこで、これらを観察す る場合には、ビニールテープを貼ったスライドグラスに卵をとり、少量の精子懸濁液を 加え、カバーグラスをかけてすぐに検鏡する。  受精が完了したビーカーは約10分後に上澄み液を捨てて新しい海水を入れる。  余分な精子を捨てて海水の質の低下を防ぐためである。この操作は数時間毎に行った 方がよい。受精させた時刻はビーカーにマジックで記入しておく。
福岡教育大学倉本研究室/「ウニの発生実験」より

【ウニを殺さない方法】
【アセチルコリン法】
注射器でアセチルコリン(海水に 0.1Mの濃度に溶かした液)を口器周辺か,種類に よっては肛門のわきに少量(ムラサキウニやアカウニで 0.5ml以下)注入するという もの。  KClの注入より都合が良いと思われるのは,アセチルコリンが生体中に存在し,か つすぐに分解されてしまう物質だからである。この方法は1969年,ハインガードナーが 考案した.最近,ウニが採集されて減ってしまい深刻な事態になっているのにかんがみ て,この方法の使用が推奨されている。
【電気ショック法】
 電気ショック法(30Vくらいの電圧をかける)というのもある。これは見た目の傷は 与えないがウニにとってあまり安全とはいえないようである。いずれにせよこれらの方 法では卵や制止の放出量はいくらか少なくなる。
【根本的な問題】
 ところでいずれの方法を使うにせよ、さらに改良すべき点がある。それは放卵・放精 の際ウニを逆さ、つまり口を上,生殖孔を下にしないということである。ウニを逆さに して卵や精子を垂れるにまかせるというのはやめるべきである。でてきた卵や精子は丹 念にピペットで吸い取るか、海水で洗い流して容器に受けるようにする。こうすること によってウニが死ぬ確立はいっそう減る。よほど弱っている個体でもない限りまず死ぬ ようなことはなくなる。少々手間がかかるようになるのは致し方ない。  放卵・放精の際,空気中で体が逆さにされているのはウニにとって堪らないことのよ うに思える。おそらくこのような状態では貴重な体腔液も漏出してしまい、これが致命 的打撃となるのではないだろうか。自発的に放卵・放精した場合でもその際に空気中で ひっくり返されていたのでは無事ではないようである。なお、このようなときに逆さに さえされなければ1時間くらい空気中にさらされていても問題ない。要はとにかく卵や 精子を放出しているあいだ、空気中でひっくり返されていなければよいのである。
【もし可能なら】
生態系保護のためにというにはあまりにささやかな話であるが、海の限られたところに しがみついて生きているウニを、ほんの少し余分な手間をかけるだけで殺すことなく利 用し、元の生息地に返してやるように努めるならば、利用効率の面のみならず倫理上も 好ましいことにように思われますがいかがでしょう。 実験で残った受精卵なども海に放してやれればいいのですね。 「ウニを殺さないで採卵・採精する方法」/『遺伝』1992年1月号(46巻1号)p109
                   埼玉大学教育学部教授 藤沢弘介 先生


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