センチュウの教材化
卵をたくさん持ったセンチュウは、1匹のからだの中にさまざまな段階の受精卵が入っており、
それらの卵を同時に観察できるところが、発生の学習に適した教材であると考えている。
また、短時間で卵割が進むため、発生初期の卵を継続して観察すれば、授業時間内で卵割の観察
も可能である。入手が簡単で安価なところも魅力である。
センチュウの発生
C.elegansという種は、雌雄同体と雄の2性で、ほとんどは雌雄同体の体内受精で子孫をつくる。
しかし、雄と交尾をすると雄の精子が優先して受精に使われ、交雑による子孫をつくる。
しっかり子孫を殖やしながら、適宜、遺伝形質を交換するという高等戦術を使っているようだ。
受精後約25分で第一卵割が始まり、40分で2細胞期、50分で4細胞期になる。
第1分裂は非対称的な不等分裂で、卵質をおよそ6対4に分かち合う。
第2卵割は大きいほうが先に分裂を始める。60分後には6-12細胞期、140分で原腸陥入期、
440分で形態形成期、550〜840分で孵化する。幼虫は4回脱皮して約2日で成虫になる。
1匹の雌雄同体から産まれる子の数は精子の数によって決まり、自家受精の場合は約300である。
雄と交配した雌雄同体は、餌が十分にある場合、1000以上の受精卵を産む。

センチュウの採集と飼育
ベルマン法
漏斗の足にゴム管を取りつけ、ピンチコックで留める。ショウガはみじん切りにし、
ガーゼに包んで漏斗の中に入れる。ショウガが隠れる程度水を張り、一昼夜そのまま
放置する。センチュウが水の中に泳ぎ出し、重力によってゴム管んの底に溜まる。
翌日ピンチコックを開き水を少量落とすと、センチュウが分離できる。
培地
じゃがいも1個をサイコロ状に切り、水500mlで30分弱火で煮る。
上澄み液200mlをビーカーに移し、ブドウ糖4g、粉末寒天4gを加え、電子レンジで5分間
煮沸し、シャーレに分けて冷やし固める。
植え継ぎ
センチュウは大腸菌を餌としているが、培地でセンチュウと大腸菌は同時に繁殖する。
センチュウのいる培地をガラス棒で擦り大腸菌ごとすくい、新しい培地に擦りつける。
新しい培地で再びセンチュウと大腸菌が殖え、1週間ほどで培地全体にセンチュウが
広がるようになる。
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発生の観察
授業の1週間ほど前に植え継ぎを行いセンチュウを準備する。
双眼実体顕微鏡で見ながら、カッターで先を細く削ったつまようじで成虫を釣り上げる。
水を1滴落としたスライドガラスに移し、カバーガラスをかけずにセンチュウの姿と
腹の中の卵を100倍で観察する。
次にカミソリでセンチュウのからだを切って中の卵を出し、カバーガラスをかけて
400倍で検鏡する。長時間観察するときは、脱脂綿を小さく丸めて水を含ませた
ものをカバーガラスの端に置いておくと良い。
授業の結果
最初はセンチュウの姿や動きを見て「気持ち悪い」と言う生徒が多いが、卵を観察
できたせいとは皆「観察できて良かった」「小さくても頑張って生きているのに感動した」
「受精卵が分裂してからだができていくのがわかった」などという感想を書き、生き物の
躍動感を感じていたようである。
一方、課題となるのは、培地からセンチュウを釣り上げるのが、生徒にとっては難しいこと
で、どうしても時間がかかることである。
【参考文献】
飯野雄一 石井直明 編『線虫 究極のモデル生物』シュプリンガー・フェアラーク東京
吉川寛 監修 小原雄治 編『線虫 1000細胞のシンフォニー』共同出版